「――時間は人にとって最もやさしくて残酷なもの――
深く傷ついた心を癒してくれるかわりに あなたへの想いを移ろわせて行く」
システム
初回版では色々不具合があるようですが、私の手に入れた改訂版ではバグもなくかなり快適でした。
このシステムはアージュの汎用システムらしいんですが、かなり親切な作りになってますね。
メッセージスキップ、オートクリック、メッセージ読み返し等必要なシステムは全部揃ってます。
メッセージ読み返しで文をクリックすると、声が流れるのもいいですね。
後セーブファイルも多いですし、またセーブに小さなサムネイルが付いている上に
コメントまで記載できるんですから、もう至れり尽せりといった感じです。
システム的には問題はないですね。
CG
原画はバカ王子ペルシャさん。ちょっとむちっとした感じの絵をかかれる方です。
あと「SenseOff」などの原画を担当されてるゆうろさんも原画をかかれています。
(どこの絵を書いてるのかは激ネタばれのため内緒)
各キャラクターの絵はかなり可愛くかかれてるので、絵に関しても問題はありません。
後このゲームの特出すべきところは、なんといっても背景と演出でしょうね。
背景がものすごく綺麗に書かれてる上、時間によってきちんと書き分けられてるので
感情移入が凄くしやすくなります。あと何より上手いなぁと思ったのは雨の効果でしょうね。
本当に雨が降っているような画面効果が使われてます。このゲームでは雨の日に
起こるイベントが結構あるために、この演出のせいで嫌が応にでも盛り上がります。
ってことで絵にも全く問題はありません。
音楽
これもよくできてますね。お気に入りの曲は「陽射し」「薄笑い」「六月のメモリーアレンジ」ですな。
「陽射し」はピアノメインの穏やかな曲。「薄笑い」はアコースティックギターメインの疲れた感じのする寂しい曲。
「六月のメモリーアレンジ」はピアノメインの静かな曲です。ボーカル曲は二曲。OP「Rumbling Heart」は
ダンサブルな曲ですが、どこか悲壮感の漂う曲です。ちなみにこの曲はメインヒロインともいえる
「涼宮遙」役の声優さんが歌ってるそうですが、結構上手いです。
EDテーマ「君の望む永遠」は・・・・はっきり言って反則。
寂しげな雰囲気といい、歌詞といい、入ってくるタイミングといい、かなり極悪に仕上がっております。
っていうかこの曲のせいで嗚咽をあげて号泣しましたよ・・・(死
特に詩の最後の部分「あなたに会えた丘の上星が降る」って部分がねぇ・・・(泣
ここまで詩のいい曲は久しぶりに聞きましたよ。私は音楽とは思いを伝える手段と考えてるので、
詩のいい曲には全く持って弱いのです。
そんなわけで音楽もかなりいいですね。
シナリオ
このゲーム、よくあるエロゲのようなファンタジー要素は一切ありません。
ロボットもいないし、奇跡も起きないし、輪廻の転生もありません。
つまり、このゲームには「現実」しかありません。ゆえにシナリオに一切の仮借がありません。
そしてこのゲームの最大の特徴は人の「感情」が、あまつとこなく表現されています。
愛、親しみ、嫉妬、憎悪、恐怖、羨望・・・・・・
それゆえに、はっきり言ってプレイしてて「辛い」です。それゆえエロゲに「夢」や「理想」を求めてる人には、
全く持ってお勧めできません。そういうエロゲ観をお持ちの人はプレイしない方がいいでしょう。
あと主人公の性格。人によっては激ヘタレ君にしか見えないので、その方の恋愛観などによっては
おそらく不快感しか覚えないでしょう。だから清廉な恋愛が好きな人にもお薦めできません。
ただ私は人とは儚いもの、弱い物だと思っています。故に、悩み、苦しむ訳ですが、
悩み、苦しむ事によって、人とは成長していく物ですし、周りのことを気遣えるようになるんでしょう?
だから私はこの主人公君を貶す気は全く持ってありません。
と言うより逆に人間らしさを感じて好感が持てますね・・・
あと「人を愛する事」というのは奇麗事で済まされる問題ではありませんから
1人の異性だけを好きになるわけではないですし、例え相手がたった一人だとしても、
その人を独占したいと言う、独占欲や嫉妬と言った「負の感情」が出てくるわけですから。
だから「愛」という感情の「正」と「負」の部分を、これでもか!と言うくらい描ききっています。
しかし、「正」と「負」の両方を併せ持ってこその、人間ではないでしょうか?
光が当たればその後ろには影ができる・・・
こんなことは当たり前の事ですが、この業界では忘れ去られがちなことです。
詰まるところ「愛」という感情から「人」とは「人の繋がり」とは何か?と言う事にアプローチした作品が
この「君の望む永遠」ではないでしょうか?
このゲームは、散々「辛い」とか「鬱」とかネット上では評価されていますが、
私はそれだけの作品ではない、と言いたいですね。
終わった後には「人ってなんて面白くていいもんだろう」って思える作品ですから。
あとこのタイトル、「君の望む永遠」ですが、言うまでもなく私たち人間は永遠の存在とは
なりうることが出来ません。そんな中で、「永遠」を見つけると言った意味でしょうかね。
心触れ合った人の思いを、受け取り、それを適える。
その瞬間の思いを悔いの残らないよう遂げることにより、刹那を永遠に変える・・・
どれも1人ではかなわないことですが、人と繋がることによって私たちは「永遠」の存在に
なれるんではないでしょうかね?
儚く、脆い私たちですが、寄り添う事によって「永遠」になれる。
それを馴れ合いと言ってしまえばそれまでですが、所詮人とは1人では生きていけない生き物ですからね・・・
最後にこのゲームをやって思った私見を述べたいと思います。
「愛」とは「幻想」ではないでしょうか?
幻想だから儚く、脆い・・・
でも儚く、脆いからこそ、大事に育てていく必要があるんではないでしょうか?
愛は絶対なんて思うことこそが、間違いの始まりになるような気がします。
迷い、戸惑い、苦悩・・・そんなものを養分として育つ一つの幻想が「愛」ではないでしょうかね・・・
幻想に過ぎなくても私たちが生きるには必要不可欠なんですから・・・
キャラクター
これも非常に良く出来てますね。基本的に全員キャラが立ってる上に、1人の人間として描かれています。
故に「感情」をモロにぶつけてくる事もしばしばです。
人間なんですから、綺麗な感情だけでなく、ドロドロした澱のような感情ももちろん持っています。
だから「萌えゲー」というジャンルになれた方には少し辛いかもしれません。
一つの人間ドラマとした考えたらこれが当然なんでしょうが。
あとこのゲーム、二部においては主な舞台が、病院とバイト先なんですが、
上手くそこに「大人」を配置する事によって、ストーリーを上手く導いています。
その辺に、力量を感じましたね。
そんなわけでキャラも大変良く出来てます。
総評
もうエロゲとしては完璧に近いですね。
誤字が多いといったあげ足取りくらいしか欠点がありません。
親切なシステム、美麗なグラフィック、時の流れによって移り変わる背景、練りこまれたシナリオ
心に届く音楽、人として描かれたキャラクターなど極限にまで精密に出来ています。
ただ、これを文句なくお薦めできるかと言えば、それは「否」としか答えようがありません。
この主人公に感情移入できるかどうかは別として、本当に悶絶するほど選択に悩む選択肢
のオンパレードですし、人の汚い部分をこれでもかと言うくらい描ききっています。
故にかなりプレイ中は鬱になります。さらに前述のとおり主人公君があまり強い人間でないので
人によってはかなり腹が立つ事でしょう。
だからこのゲームは全く持って一般受けする物ではありません。
でもプレイヤーの見てきた物、触れてきたものによっては、珠玉の名作になることでしょう。
人を好きになること、人に好きになられることについてこれほど考えさせられるゲームは無いですから。
最後にこの主人公君に一つの言葉を贈りたいですね・・・
「善人なおもて往生をとぐ、いわんや悪人をや」(歎異抄より)
今回の撃沈キャラ:涼宮遙、涼宮茜(っていうかこの姉妹反則・・・・
追記:マナマナシナリオについて(ネタバレのため伏字)
さて、このゲームの最大の論点と言いますか、賛否両論なのは穂村愛美ことマナマナのシナリオでしょうね。
Web上では「こんなシナリオいらん」という意見が多いようですが。私なりの意見をここで書いてみようと思います。
確かにあのシナリオである「愛の形」というのは、一般的な意見から言うと「異常」としか言いようがありません。
ただ、「異常」の一言で片付けていいものではないと思います。
ではこれを読んでる方に一つ問いたいのですが、では「一般的な」愛の形とはどんな物ですか?
おそらくは愛し、愛され、そして結婚して子供を作り、幸せな家庭を築く。
そんな答えが返ってくることでしょう。ではもうひとつ問います。
ではその「カタチ」はだれが「一般的」と決めたのですか?何を根拠にして「一般的」なのですか?
その「カタチ」は生産的であり、人の世を続けさせるためには
必要な「カタチ」で有るがゆえに一般的に認知されてるに過ぎないのだと思います。
つまり私が言いたいのは「愛の形」に「一般的」などというものはないということです。
上で書いたとおり、私は愛とは「幻想」に過ぎないと考えています。
「幻想」であるがゆえに、「カタチ」などないと思います。だから私はアレもありだと思いますね。
と言うより純粋すぎたがゆえのカタチ何だと思います。
そしてその純粋さが狂気というカタチに昇華したのがあのシナリオだと思います。
純粋とは普通いい意味を持つ言葉ですが、私はそうは考えてません。
純粋だと言うことは、物を知らず、他の物も分からないと言う事と言う事と同義ですから。
他が見えないゆえに、その愛を注ぐ対象に異常に執着し、ああいったカタチを取らざるを得ないのだと思います。
だから少なくともあの二人にとっては他から見たら異常なものであっても、紛れもなく「愛」であり、そして「永遠」何だと思います。
これはあくまで私の推測に過ぎませんが、今日の世界、この国においては、「愛」というものは
無条件で「絶対善」として認知されていますが、一般的なカタチとは違う「愛」を示す事によって
「愛」というものが「絶対善」ではなく、一つの感情に過ぎないと言う事をこういったアンチテーゼを示す事によって
言おうとしたのではないかと思います。
(ネタバレここまで)